東洋医学の「脾」とは?(3)脾のツボ
- 2016/07/26
- 10:20
東洋医学の「脾」とは?(1)脾の働き(2016年7月20日)
東洋医学の「脾」とは?(2)脾の不調(2016年7月22日)
からの続きです。
今日は脾の治療に使うツボについてのお話です。
【脾のツボについて】
鍼灸は腰痛肩こりなどコリや痛みの治療のイメージが強いのですが、脾の不調など内科のトラブルでも大いにその強みを発揮します。目白鍼灸院では腰痛肩こりなどの患者さんよりも内科や婦人科の問題などで来られる患者さんの方がとても多いです。
脾のトラブルでは脾のツボや胃のツボをメインに使います。
脾胃は両者で1セットなので治療の際も両者のツボを組み合わせて使います。
具体的な治療ツボの話をする前に、ちょっとだけツボについての概要をお話しします。
たとえば上の図が胃のツボの図。
胃のツボだけでもたくさんあります、胃のツボは45個、左右対称に存在していて、左右を数えると全部で90個あります。
一見不規則に並んでいるように見ますが、我々鍼灸師から見るとちゃんと規則的な並び方なのです。
(脾のツボの話なのに胃のツボ図を見本にしたのは図が書きやすいためです)
経絡(けいらく)という気血の流れる見えない道があります。
これは体の中では内臓につながっていて、体の中と身体の表面を連絡する経路になっています。
胃の経絡は体の中で胃とつながって体表面につながってます。
胃の経絡は前頭部、鼻や目にもつながって、身体の前面をとおり、胃につながり、足の先まで通ってます。
そのため、足先のツボで胃を治療したり、頭のツボで胃を治療したりします。
また、足先で頭や顔の治療をしたり、反対に頭や顔で足の治療をすることもあります。
経絡の上にツボがあります。
ツボの事を正式には「経穴(けいけつ)」と呼ぶのですが、文字通り「経絡の穴」です。
ちなみに穴は気が出入りしていると考えます。
経絡は気血が流れる道、パイプのようなものですが、滞って気血の流れが悪くなるといろいろな症状が出ます。
経穴の物理刺激で流れをよくして滞りを解消しめぐりをよくすることが鍼灸治療です。
幼少時に鼻の嗅覚がなかった私(藤井)が中学生時代に北海道帯広市の東方鍼灸院・吉川正子先生の1回の鍼灸治療で鼻が治り、嗅覚が戻った奇跡的な経験がありました。治療後に自宅近くのキンモクセイの香りが脳に突然入ってきた時の驚きは今でもはっきり覚えているほど衝撃的でした。
それが中医学の道へ進む大きなきっかけになったのでしたが、その時に先生が使ったツボが足先にある「内庭」(ないてい)という胃の経絡上にあるツボです。
その時は鍼灸の事なんか全く知らず、治療も生まれて初めてで何が何だか全く解らず、なんで鼻が良くないのに鼻の周りは全く触らずに足ばかり触っているのだろ?なんて思ってましたが、今になって思うと内庭への刺激で胃の経絡がちゃんと通って鼻が治ったのだと思います。
1発で治してしまった吉川正子先生の東方鍼灸院には鍼灸国家資格取得後に弟子として修行に行き、いまでも目白鍼灸院のスタッフ皆で毎年定期研修をさせていただいております。
なお、内庭は今回の連載のテーマである脾虚証の時は使うことはあまり多くないです。
脾胃の鍼灸治療では、中脘(ちゅうかん)、豊隆(ほうりゅう)、脾兪(ひゆ)などのツボが主に選ばれます。
その時々の症状や体質、ツボの感覚などいろいろな要素でツボを決定します。このツボの選択が鍼灸師の腕の見せ所。
また、冷えが強い場合は積極的にお灸や湯たんぽなどの温熱刺激を使い脾陽をサポートします。
特に中脘(ちゅうかん)は脾胃のすぐ近くの場所にあるためにお灸による温熱刺激を行って脾陽を助けます。
ご家庭で自分でお灸によるセルフケアをする場合でもお腹のツボはお灸がしやすく、中脘はとても探しやすい上にとても効果も高いのでお勧めです。
冷えによる腹痛はおなかに湯たんぽを当てたりするととても気持ちよく、痛みが軽減することが多いです。
くれぐれも気持ちよくて湯たんぽをおなかに置いたままにして寝ないこと!
もし腹部を低温やけどすると大事になります。自宅で温熱刺激をする時は低温やけどには充分注意してください。
豊隆は足のすねにある脾胃のツボです。
すねの筋肉が大きく盛り上がる場所に位置していることから豊隆と命名されています。
このツボは絡穴(らくけつ)といい、脾の経絡と胃の経絡などを連絡するツボなのでこのツボを刺激することで脾と胃の二つの経絡をいっぺんに刺激できる一石二鳥(一穴二経?)的な便利ツボです。
身体の水はけを良くしてくれるので、むくみがちな人は覚えておいて損はないですよ。
東洋医学の「脾」とは?(4)脾の漢方薬に続く
目白鍼灸院
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TAG:mejiro tubo acupuncture 夏バテ 東洋医学 夏の体調管理 漢方薬 中医学 脾と働き 脾虚 脾虚って何?脾虚とは 脾 べろの歯形・歯痕・ツボ・"脾胃ツボ・チュウカン・ヒユ・ホウリュウ・豊隆目白鍼灸漢方薬
東洋医学の「脾」とは?(2)脾の不調(2016年7月22日)
からの続きです。
今日は脾の治療に使うツボについてのお話です。
【不忍池の蓮2016年7月24日朝】
【脾のツボについて】
鍼灸は腰痛肩こりなどコリや痛みの治療のイメージが強いのですが、脾の不調など内科のトラブルでも大いにその強みを発揮します。目白鍼灸院では腰痛肩こりなどの患者さんよりも内科や婦人科の問題などで来られる患者さんの方がとても多いです。
脾のトラブルでは脾のツボや胃のツボをメインに使います。
脾胃は両者で1セットなので治療の際も両者のツボを組み合わせて使います。
具体的な治療ツボの話をする前に、ちょっとだけツボについての概要をお話しします。
【胃のツボ】
たとえば上の図が胃のツボの図。
胃のツボだけでもたくさんあります、胃のツボは45個、左右対称に存在していて、左右を数えると全部で90個あります。
一見不規則に並んでいるように見ますが、我々鍼灸師から見るとちゃんと規則的な並び方なのです。
(脾のツボの話なのに胃のツボ図を見本にしたのは図が書きやすいためです)
【胃の経絡】
経絡(けいらく)という気血の流れる見えない道があります。
これは体の中では内臓につながっていて、体の中と身体の表面を連絡する経路になっています。
胃の経絡は体の中で胃とつながって体表面につながってます。
胃の経絡は前頭部、鼻や目にもつながって、身体の前面をとおり、胃につながり、足の先まで通ってます。
そのため、足先のツボで胃を治療したり、頭のツボで胃を治療したりします。
また、足先で頭や顔の治療をしたり、反対に頭や顔で足の治療をすることもあります。
【胃の経絡とツボ】
経絡の上にツボがあります。
ツボの事を正式には「経穴(けいけつ)」と呼ぶのですが、文字通り「経絡の穴」です。
ちなみに穴は気が出入りしていると考えます。
経絡は気血が流れる道、パイプのようなものですが、滞って気血の流れが悪くなるといろいろな症状が出ます。
経穴の物理刺激で流れをよくして滞りを解消しめぐりをよくすることが鍼灸治療です。
幼少時に鼻の嗅覚がなかった私(藤井)が中学生時代に北海道帯広市の東方鍼灸院・吉川正子先生の1回の鍼灸治療で鼻が治り、嗅覚が戻った奇跡的な経験がありました。治療後に自宅近くのキンモクセイの香りが脳に突然入ってきた時の驚きは今でもはっきり覚えているほど衝撃的でした。
それが中医学の道へ進む大きなきっかけになったのでしたが、その時に先生が使ったツボが足先にある「内庭」(ないてい)という胃の経絡上にあるツボです。
【胃のツボ:内庭(ないてい)の場所】
その時は鍼灸の事なんか全く知らず、治療も生まれて初めてで何が何だか全く解らず、なんで鼻が良くないのに鼻の周りは全く触らずに足ばかり触っているのだろ?なんて思ってましたが、今になって思うと内庭への刺激で胃の経絡がちゃんと通って鼻が治ったのだと思います。
1発で治してしまった吉川正子先生の東方鍼灸院には鍼灸国家資格取得後に弟子として修行に行き、いまでも目白鍼灸院のスタッフ皆で毎年定期研修をさせていただいております。
なお、内庭は今回の連載のテーマである脾虚証の時は使うことはあまり多くないです。
脾胃の鍼灸治療では、中脘(ちゅうかん)、豊隆(ほうりゅう)、脾兪(ひゆ)などのツボが主に選ばれます。
その時々の症状や体質、ツボの感覚などいろいろな要素でツボを決定します。このツボの選択が鍼灸師の腕の見せ所。
また、冷えが強い場合は積極的にお灸や湯たんぽなどの温熱刺激を使い脾陽をサポートします。
特に中脘(ちゅうかん)は脾胃のすぐ近くの場所にあるためにお灸による温熱刺激を行って脾陽を助けます。
ご家庭で自分でお灸によるセルフケアをする場合でもお腹のツボはお灸がしやすく、中脘はとても探しやすい上にとても効果も高いのでお勧めです。
冷えによる腹痛はおなかに湯たんぽを当てたりするととても気持ちよく、痛みが軽減することが多いです。
くれぐれも気持ちよくて湯たんぽをおなかに置いたままにして寝ないこと!
もし腹部を低温やけどすると大事になります。自宅で温熱刺激をする時は低温やけどには充分注意してください。
豊隆は足のすねにある脾胃のツボです。
【胃のツボ:豊隆(ほうりゅう)の場所】
すねの筋肉が大きく盛り上がる場所に位置していることから豊隆と命名されています。
このツボは絡穴(らくけつ)といい、脾の経絡と胃の経絡などを連絡するツボなのでこのツボを刺激することで脾と胃の二つの経絡をいっぺんに刺激できる一石二鳥(一穴二経?)的な便利ツボです。
身体の水はけを良くしてくれるので、むくみがちな人は覚えておいて損はないですよ。
東洋医学の「脾」とは?(4)脾の漢方薬に続く
目白鍼灸院

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