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東洋医学の「脾」とは?(4)脾の漢方薬:「補中益気湯」解説

脾の話シリーズ第4回目、
(1)脾の働き(2016年7月20日)
(2)脾の不調(2016年7月22日)
(3)脾のツボ(2016年7月24日)

からの続きです。まずは1から順番に読んでください。
今回は漢方薬の話なのでかなり難しい内容になりました、専門家以外は全く読んでもつまらないかもしれません。


20160522脾の働きについての記事イメージ画像2





【脾の漢方薬】


東洋医学では気血水の源である脾の健康状態を特に重要視しているので、脾の治療に使う漢方薬(方剤)が山ほどあります。
そのなかでも特によく使われる代表選手が、、、

・六君子湯(りっくんしとう)
・補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
・参苓白朮散料(じんりょうびゃくじゅつさんりょう)
・人参湯(にんじんとう)

などの漢方薬です。
これらすべてに人参(ニンジン)・白朮(ビャクジュツ)・甘草(カンゾウ)の3つの生薬が入っています。
脾の治療のスタープレイヤー的なこの三薬で脾の陽気を補い、寒湿を取り除き脾の気血水の生成力を取り戻します。


脾胃の漢方薬・ニンジン・ビャクジュツ・カンゾウ20160720


人参(ニンジン)はお腹の中で火を起こしてその火力で水を飛ばし、脾の本来の力である「脾陽」をサポートします。
白朮(ビャクジュツ)は乾かすのが得意なドライヤー的な役目で、びしょびしょに湿ってしまった脾を乾かして元気にします。
甘草(カンゾウ)は甘味料として使われる脾胃にやさしいお薬で、薬性の強い他の薬を穏やかに調和したりする看護婦さんのような役目です。

上記三薬には入ってませんが、茯苓(ブクリョウ)というキノコ類の薬も多くの処方で入っていて、茯苓は胃腸の余分な水分を流し脾の力を助けます。
これら脾の活力をアップさせる生薬を「健脾薬(けんぴやく)」といって胃腸の不調を治すありとあらゆる薬に配合されてます。



【六君子湯】りっくんしとう
六君子湯にはいくつか種類があるのですが、寒冷刺激による脾胃の停滞、胃が受け付けなくて吐き気や嘔吐などの時に使います。脾虚の漢方薬の基本です。これをベースに色々な種類の六君子湯があります。


【参苓白朮散料】じんりょうびゃくじゅつさんりょう
これは脾虚が長く続き、慢性的な下痢で脱水を起こしやすい人、水(津液)がうまく回らずに脾虚なのに喉が渇くなど熱が少々こもり気味な方に使います。


【人参湯】にんじんとう
別名「理中丸」は、整える意味の「理」、お腹を意味する「中」というわかりやすいネーミングです。この人参湯は寒冷刺激などで脾虚が急激に悪化した場合、冷えによる急激な腹痛が強く出てしまう場合に選択します。
人参の持つ強力な火力で脾陽をサポートし、寒湿を乾かすので、暑い時期にクーラーで寝冷えして朝に腹痛を起こす場合や、冷たいものが原因の下痢、アイスクリームで腹痛、、なんて時には速効性が高いです。


【補中益気湯】ほちゅうえっきとう
脾陽を強力にサポートして気血を持ち上げる生薬が含まれます。元気がなくて動けないような時、頭に気血が届いてない場合に使うことが多いです。
特に気を補うパワーが強い黄耆で気の量をアップするのと当帰による血の補充も行われるので、病気やケガなど大手術後や病後の体力回復に使われることも多いのがこの処方の特徴です。



補中益気湯の解説図


補中益気湯図解ほちゅうえっきとう脾胃漢方20160720



脾が大いなる損傷を受け、上昇できずに気血を作れない、だるくて頭が回らない、精神不安、頭痛、めまいなど。
そればかりか、脾気が逆に下方に落ちてしまい、内臓下垂、下血や不正出血、むくみや下痢、脱肛など気が下に落ちる「脾気下陥」(ひきげかん)の症状が出てきた場合の処方です。



脾気下陥・補中益気湯・脾胃の漢方薬2016年7月20日

本来上向きの脾の力が足りずに、下向きに落ちてしまう「脾気下陥」ひきげかん



湿をあまり伴わない場合の脾虚のダルさ、食べると動けなくなるほどの脾虚のダルさなどは補中益気湯が適していることが多いです。




脾胃をサポートして元気をつけるこの薬は病後の体力回復や熱中症の回復などにも応用します。最近ではがん患者さんの手術後などにドクターから「補中益気湯は免疫増強の作用がある」って説明を受けている患者さんも多いです。

脾胃が元気になって気血が整えば身体が元気になるので免疫増強って表現をしても間違いではないです。
ただし、脾胃が弱ってぐったりしている場合に使う薬なので、体質・病態に適応しない場合に補中益気湯を飲んでも免疫力は上がるわけではありません。
そこのところが良くわかっている上で免疫増強って言っているのかどうかが大事です。








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