今日は患者さんからの質問が多い刺絡治療についてのお話です。
「刺絡って免疫を上げるらしいので私にも刺絡をして欲しい」などと言われることもあります。
鍼治療には刺絡(しらく)療法と呼ばれるものがあります。
刺絡は主に三稜鍼(さんりょうしん)と呼ばれる鍼で経穴や阿是穴、血絡
(皮膚表面の細い糸状血管腫・・・細かい血管のコト)や井穴(せいけつ)とよばれる手指末端のツボなどを刺激します。
井穴に刺絡をすることを井穴刺絡といいます。血管を刺絡した場合、血が出ることもあります。
「血がでる」なんて聞くと、怖い・怪しい・痛そう…というイメージかもしれません。
でも、実際に治療で出る血の量は、一滴にも満たない、ごくわずかな量であることが多く、痛みもそれほど感じません。(お針子仕事のとき、誤って手をさしたほうがよっぽど痛く、血もでます。

)

最近、この刺絡療法が「自律神経免疫療法」などと呼ばれ、免疫向上効果や自律神経調整効果などが注目されています。鍼灸の素晴らしさを西洋医学の医者も気づいてきたと言うわけです。
刺絡療法は体質と症状が適応した場合には大変有効で、しばしば
劇的な治療効果を発揮することもあり、鍼灸の臨床には欠かせません。
例えば咽喉が痛んで熱っぽい風邪の初期症状の時、親指や人差し指の井穴(せいけつ)という経絡末端のツボに井穴刺絡することがあります。条件が整うとその治療効果は絶大で、その場で即座に咽喉の痛みがなくなります。
「あれ?」とたいていの患者さんは驚きます。
なんとも不思議な治療です。

このように刺絡はとても有効な鍼灸治療です。
しかし、刺絡療法にだけ特別に免疫・自律神経調整作用がある訳ではなく、あくまでも鍼灸全体にこのような免疫・自律神経調整の効果が有り、刺絡はその中の一部分の技に過ぎません。井穴刺絡は大変効果的ですが、治療作用が強い分、適応か不適応かの判断を間違うと有害な刺激になってしまうこともあるのです。
とくに気血が不足した弱った身体の場合は注意が必要です。
その理由は、刺絡は鍼灸治療の中でも瀉(しゃ)という要素が強い治療です。
瀉とは、「余分なものを捨てる」というような意味で、瀉の要素が強い治療は病気に対する攻撃性の強い治療といえます。病の原因を積極的に取り除くときの治療法です。
もしも身体が弱ってしまっている場合、すなわち気、血や生気(抵抗力のような意味)が不足している場合に瀉の要素が強い治療はますます弱らせてしまうことがあるのです。
たとえると、便秘で困っている場合に寫の要素が強い下剤を処方すれば良くなりますが、おなかが緩い場合に瀉剤である下剤は使いません。
この、「瀉」の治療法を使うか「補」の治療法(ほ:文字通り身体の力を補う要素の強い治療)を使うかの見極めが一番大事です。もっと言えば、同じ患者さんでも、どのツボに補法を使い、どのツボに瀉法をつかうかなどの見極めが大事です。
東洋医学的に身体全体のバランスを整えながら、刺絡療法もひとつの手段として必要な場面で適宜使えばいろいろな治療ができます。
というわけで、刺絡療法は、すればするほど免疫力が上がる魔法の治療ではありません。
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